ひと言でいうと
- 中退共=会社が掛金を出し、国が定めた予定運用利回りで積み上がる、シンプルな共済制度
- 企業型DC=掛金を従業員が自分で運用し、その結果が受取額になる年金制度
中退共は会社が負担して従業員に還元する制度、企業型DCは器をつくって従業員に選ばせる制度、と整理すると分かりやすいと思います。
比較表
| 比較項目 | 中退共 | 企業型DC |
|---|---|---|
| 掛金の負担者 | 全額事業主 | 事業主拠出/選択制なら給与からの振替も可 |
| 会社の新たな支出 | 必ず増える | 選択制なら増やさずに始められる |
| 掛金の税務上の扱い | 全額損金算入 | 全額損金算入 |
| 運用の責任 | 国の制度側(予定利回り) | 加入者本人(元本割れの可能性あり) |
| 受け取れる時期 | 退職時(年齢を問わない) | 原則60歳以降 |
| 役員の加入 | できない(使用人兼務役員は可) | 厚生年金被保険者なら可 |
| 掛金の減額 | 従業員の同意等が必要で難しい | 規約の範囲で見直しの余地あり |
| 国の助成 | 新規加入等で助成あり | 助成制度なし |
| 導入の手間 | 比較的簡易 | 規約の承認申請等が必要(4〜6か月) |
| 社員への説明 | 簡単(会社が積むだけ) | 説明会が必須 |
※掛金月額の範囲、助成の内容・期間は変更されることがあります。金額は必ず最新の公式資料でご照合ください(要確認)。根拠:中小企業退職金共済法、確定拠出年金法ほか。
判断が分かれる3つのポイント
1. 会社が掛金を負担できるか
ここが最初の分岐点です。中退共は全額事業主負担が前提で、従業員から徴収することはできません。制度として分かりやすい反面、人数が増えれば固定費としてそのまま乗ってきます。
「賃上げの原資も苦しい」という状況であれば、選択制の企業型DCのほうが現実的です。逆に、会社の姿勢として「こちらが積む」と示したいのであれば中退共が向きます。
2. 役員に退職金を用意したいか
中退共には事業主や役員は加入できません(使用人兼務役員は一定の要件のもとで可)。一方、企業型DCは厚生年金の被保険者であれば役員も加入できます。
中小企業では、役員自身の退職金の準備を目的に企業型DCを選ぶケースが実際にあります。ここは明確な差です。
3. 「いつ受け取れるか」をどう考えるか
中退共は退職時に受け取れます。30代で転職しても、そのときに支給されます。対して企業型DCは原則60歳まで引き出せません。
従業員にとっての魅力という意味では、中退共のほうが実感しやすい面があります。ただし「退職時に現金が出る」ということは、短期離職を止める力は弱いとも言えます。長期での資産形成を促したいなら企業型DCです。
併用もできます
中退共と企業型DCは併用が可能です。実際の設計としては、次のような組み合わせが考えられます。
- 中退共で会社としての退職金の土台をつくる
- そのうえで選択制の企業型DCを用意し、上乗せしたい社員は自分で積めるようにする
ただし、他制度があると企業型DCの拠出限度額の計算に影響が出ます。併用を検討する場合は、限度額の枠がどうなるかを先に確認してください。
どちらを選ぶかの目安
| こんな会社には | 向いている制度 |
|---|---|
| 会社が掛金を負担でき、制度をシンプルにしたい | 中退共 |
| 従業員の在職期間が比較的短い業種 | 中退共 |
| 新たな支出を増やさずに退職金の器をつくりたい | 企業型DC(選択制) |
| 役員の退職金も同じ枠組みで準備したい | 企業型DC |
| 長期勤続と資産形成を促したい | 企業型DC |
| 土台と上乗せを分けて設計したい | 併用 |
なお、どちらの制度でも退職金規程の整備は必要です。制度に加入しただけでは社内ルールとして完結しません。支給要件、勤続年数の取り扱い、懲戒解雇時の扱いなどを規程に落とし込む作業が残ります。ここは社労士の領域ですので、あわせてご相談ください。
まとめ
- 中退共は会社が全額負担、企業型DCは選択制なら支出を増やさず導入できる
- 中退共は退職時に受け取れる、企業型DCは原則60歳以降
- 役員は中退共に加入できないが、企業型DCは厚生年金被保険者なら可
- 中退共には国の助成がある(内容は要確認)
- 併用も可能。ただし拠出限度額の枠への影響を先に確認すること
- どちらを選んでも退職金規程の整備は必要